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心霊

砂の唄さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

ガソリンスタンドにいたヒト
長編 2022/04/15 03:28 4,020view
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 これは私が大学生だった時の話です。親戚の叔父さんが新車を購入するということで今まで乗っていた軽自動車を私が譲り受けることになりました。大学生活に車が必須というわけではなかったのですが、実際に乗ってみると中々便利なもので、私はいろいろなところへ出かけるようになりました。

 運転にもだいぶ慣れてきたころ、私は連休を利用して遠出をしてみようと考えました。目的地は郊外にあるアウトレットモールにしました。ナビで見てみると所要時間3時間越えの長旅でしたが、その位なら大丈夫だろうと判断し意気揚々と出かけました。

 朝早めに出発し、途中途中休憩をはさみながら運転し、時間はかかりましたが難なく目的地に到着することができました。そこからは買い物や食事など存分に楽しんでいたのですが、気が付けばもう閉店時間が近いようで、時刻は21時になろうかというところでした。
 私は会計を足早に済ませて店を後にし、駐車場の自分の車へと向かいました。トランクに買ったものを詰め込み、車を発進させます。夜の運転は自信があったわけではありませんが、来たときの道路は入り組んでもなく、道幅も広かったので不安はありませんでした。

 順調に車は進んでいき、時刻は22時半くらい、アパートまであと半分くらいの距離の時だったでしょうか、私はふとガソリンの残量が気になりました。メーターを見てみると残量は残り3割くらいでした。私はしまったと思いましたが、今走っている農道はもうしばらく続きますし、この辺はたまにコンビニを見かけるくらいの辺鄙なところでした。こんなところでガス欠になったらどうしようと不安になりましたが、引き返したり、ガソリンスタンドを探しまわるよりはこのまま進んだほうがいいと思い、私はびくびくしながら運転を続けました。

 23時を少し回ったころだったと思います。私は進行方向に明かりのついているガソリンスタンドがあるのを発見しました。看板は薄暗くなっていましたが、ガソリンスタンド内は明かりがついていたのでまだやっているはずと思い立ち寄ることにしました。
 
 私は車を給油機のそばに止めて、エンジンを切り車から降りました。周りはシーンとしていて人のいる気配はなく、止まっている車も私の車だけのようです。薄暗い看板にはセルフと書いてあったので私は財布だけ持って給油機の方へと向かいました。

 給油機の液晶画面は真っ暗になっていて画面を触ってみましたが、画面に変化はありませんでした。何度か触っていると突然、機械から「あ゛あ゛あ゛あ゛……」とノイズのような音が聞こえてきました。それはアナログテレビの砂嵐の音に人間の叫び声のようなものが混じったような感じでした。
 

 今思うと恐ろしい以外の何物でもなかったのですが、その時は怖いというより壊れたのかな?という思いが強く、割と冷静でいました。私は定員さんを呼びに行こうとスタッフルームのほうへと向かいました。

 ガラス戸から中を見てみると、電気はついているのですが、人がいる様子はありませんでした。私は中に入ろうと取っ手をつかみましたがドアが開きません。鍵がかかっていたのです。やっぱり閉店間際だったのかと思いつつ、ノックをしたり声をかけたりを続けてみましたが、やっぱり応答はありませんでした。それからしばらくドアの前に立っていましたが、突然何の前触れもなく辺りが真っ暗になりました。

 私はガソリンスタンド内の電気が消えてしまったというのはすぐにわかりましたが、なぜ消えたのかはわからず、「すいませーん」と声を出しながらドアを叩き続けました。
 
 この時私に聞こえるはずの音は給油機から鳴っている異音、自分の声、ドアを叩く音この3つしかないはずでした。しかしこの3つとは絶対に違う音が聞こえていることに私は気づきました。 
 
 コンクリートの床で何かを引きずるような「ずずず……ずずず……」という音、何を言っているかはわかりませんが、とにかく何かをぶつぶつとつぶやく声のようなもの、それが私の耳には確
 かに聞こえたのです。
 私は振り返りガソリンスタンド内を見渡してみました。しかし、真っ暗で何も見えません。しばらく私は固まっていましたが、先ほどから聞こえる「ずずず……ずずず……」という音が実は複数していること、その複数の音が移動していることに気づきました。私はいよいよ恐ろしくなり、今すぐこのガソリンスタンドから出なければと、給油機の異音を頼りに車へ戻りました。

 車の運転席にたどり着いた私はすぐシートベルトをしてエンジンをかけました。エンジンがかかると同時にヘッドライトが点灯しましたが、その光に映し出された光景に私は絶句しました。車の左斜め前に2体、右斜め前に1体黒い人のようなものがいたのです。背丈は大人くらいあり、それらは一様に両手を前に出し、非常に緩慢な動作でしたが私の方へ向かってきているようでした。

 
 また、エンジンが付いたことでカーラジオにも電源が入り、ラジオの音声が聞こえてくるはずでした。しかし、カーラジオから聞こえてきたのは給油機から聞こえた砂嵐と叫び声が混じったようなあの音でした。私はラジオを消そうと選局やら音量といったボタンをとにかく押したのですが、どこをどう押しても音は消えませんし、電源を落とそうとしても電源が切れません。私はあきらめて車を出そうと正面を向きました。先ほどの黒い人のようなものは左側にもう1体増えていて、明らかにさっきよりもこちらへ近づいてきていました。

 後から思い返せばですが、近くで見たそれらは表面がでこぼこしていたり、所々が不揃いな形をしていて、人型なのは共通していましたが一体一体は大分形が異なっていました。木炭を人の形に加工したみたいというのが最初に思った感想です。
 
 また、ガソリンスタンド内でずっと聞こえていたぶつぶつと呟く声のようなものですが、この黒い人のようなもの接近とともに声が大きくなっていったので、恐らくこの黒い人のようなものが何かを言っているのではないかと、この時私は思いました。

 私は半狂乱になりながらアクセルを思い切り踏みこみガソリンスタンドを飛び出しました。蛇行運転のようなとんでもないハンドルさばきで、よくぶつけなかったかなと思います。
 
 ガソリンスタンドから距離が離れるとともに、カーラジオの音はだんだんと小さくなり、最後には無音になりました。しかし、カーラジオの音が小さくなると同時にまたあのぶつぶつと呟く声が聞こえてきたのです。まだろくに頭が働かない状態だった私は、あの黒い人のようなものが追いかけてきたのだと考えました。一旦車を止め、すぐアクセルを踏めるよう準備をし、私はいったいどれだけの数が追いかけてきているのかを確認するため後ろを振り向きました。
 
 あの黒い人のようなものは追いかけてきてなどいませんでした。ずっと後部座席にいたのです。さっき見たように両手を前に出し、ゆっくり、ゆっくりとこちらに飛びかかろうとしていたようでした。私はもう狂ったように声を上げ、車から出ようとドアハンドルに手をかけようとしましたが腕が言うことを聞きません。腕を振りまわしているうちに肘がクラックションに当たり、大音量が辺りに鳴り渡りました。私は観念したように飛行機の緊急着陸の時のような体勢で体を丸めて縮こまりました。
 
 ブレーキから足を離してしまったため車が動き出し、私はハッとしてほんの少しだけ冷静さを取り戻し、なんとかエンジンを切ってシートベルトを外すことができました。そこからは何も考えず運転席から道路へと飛び出しました。しばらく道路にへたり込んでいたのですが、意を決して車の中を確認しに行きました。車内には何もいませんでした。私はだんだんと冷静さを取り戻し、恐る恐るですが車へと戻りアパートに向かって車を発進させました。

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コメント(3)
  • 黒い人は一体何なんだ…
    謎すぎて怖すぎる…

    2022/04/15/09:20
  • まじでそういう物が見える体質なら、
    運転はやめた方がいいでしょうね。
    ショッピングモールまで三時間ってもちろん一般道でしょうけど、疲れてたんでしょうね。疲れたら憑かれる人ってやっぱ体質なのかな?

    2022/06/08/04:53
  • 殺してほしい幽霊?

    2022/08/29/19:04

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