古民家の収納から出てきた物

最近、田舎の古い家を買ってきれいに修復するのが流行っていますが、20年ほど前に、知人が似たような事をしました。

かなり古い家でしたが作りがしっかりしていて、水回り工事と簡単な内装だけで住めるようになったそうです。ところが、いざ引っ越して掃除・片付けをしていると、納戸収納の奥の方から、和紙に包まれた人の髪の毛の束が出てきました。

知人は汚い、と思ってごみ収集に出そうと物置に放っておきましたが、その夜は恐ろしい悪夢に悩まされました。体がなにか真っ黒いものに締め付けられて息ができず、脂汗をかいて夜中にハッと目覚めたのです。気持ちが悪くて奥さんに話すと、「あなた、それは日中見つけたもののせいでないの」と言います。

翌朝、奥さんは物置から髪の束を取り出し、改めてきれいな紙にくるんでから、いい匂いのするお香で火をつけました。燃えがらを庭の片隅に丁寧に埋め、その前で手を合わせる奥さんを見て、知人は何でそんなことをするのだと問い詰めました。「だってあの髪の毛、理由はどうあれ、誰かが長い間大切にしまっておいたものなんでしょう。最後まで、大切に扱われて土にかえるのが当たり前よ。」以降、この田舎の家で悪夢に悩まされる事はない、と知人は言っていました。