見たことが無いドア

以前、勤めていた職場は５階建て地下１階という造りの古い建物でした。

かなり古いので「次に地震が来たらどうなるかね～」と同僚と言うくらいに寂れた建物です。

地下の一角はゴミを集める場所になっていてゴミ当番になると荷台にギリギリまでゴミ袋を載せ、落ちないように一生けん命に押さえながら廊下を渡りエレベーターに乗って地下へ降りていました。

この日もゴミ当番で可燃ごみや不燃ごみ、プラ、資源ゴミを地下に持って降りる日でエレベーターで降りたのですが、地下に行く前に１階に止まりました。

誰かが乗ってくる思い、荷台を精一杯隅の方へ寄せたのですが誰も乗ってはきません。

もう一台エレベーターがあるのでそっちに乗ったのだろうと思い、閉めるボタンを押して閉めました。

なんせエレベーターも古いので誰かが乗ってきたようなガ…ッタンと変な音がします。

ドアが開くのも閉まるのもゆっくりなのです。

そうして地下に降りた時、ふといつもと違う気配を感じました。

いつもより暗いのです。地下なのでいつも薄暗いのですが、いつも以上に暗く雰囲気がおかしいのです。

とても違和感があります。蛍光灯がパチっパチっとしているのも恐怖をあおります。

この時、視界に入っていたのに蛍光灯に気を取られて気付かなかったことがありました。

ゴミを収集場所へ置き、荷台を押してまたエレベーターに乗り閉めようとボタンを押しました。

ゆっくりドアが閉まります。

その時、閉まっていくドアの向こう側にやっとその違和感の正体が分かりました。

今までなかった扉があったのです。

とても古く頑丈で小さな窓があり埃で中は見えないような感じでした。

部屋の扉というより荷物を保管する部屋のような小さめな扉です。

一旦閉まったエレベーターのドアを再度開けるボタンを押しました。

ゆっくり開いたドアの向こうにそれはもうありませんでした。

とても怖くなり急いで戻り起きた事を話すとあそこには昔小さなお店が入っていたそうです。

私が生まれた時くらいの時代でした。

工事で今は跡形もなく、もちろん扉もないとのこと。

すごく奇妙な体験でした。

１階でエレベーターが止まったのと何か関係があるのかと思いましたが、それは今でも謎のままです。