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ヒトコワ

りうさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

お爺さん&お婆さん
短編 2022/03/14 15:04 1,684view
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小6の時、近所の小さな公園で、柔らかいボールを使っての野球が流行った。
公園の外に出るとホームランっていう、丁度よい距離感が良かった。
ただ、公園外の道路の先には民家が数件あったので、
時々、迷惑をかけた。特大ホームランを打つと民家に入ってしまうのだ。でも柔らかいボールだし特に気にしてなかった。ボールを取りに民家に入る時も、
「すいませーん。ボール取らせてくださーい」
と元気に声を掛けていたし。

その日も野球をしていて、私が運良く特大のホームランを打った。結果、老夫婦が住んでいるというお宅にボールが入った。
その時、お爺さんが丁度、お庭にいて、

「オーライ、オーライ」
と大きな声を上げて取ろうとしていた。

そのお爺さんは、頻繁に我々の遊ぶ様子をニコやかに見ていて、挨拶すると優しく返してくれるような人だった。

ボールを取ろうと両手を上げながら少し後退した時、つまづいてしまって、後ろにコケてしまった。
後ろには丁度、池のブロックがあって、後頭部が直撃する形となった。お爺さんは倒れてピクリとも動かなかった。

我々は怖くなってボールを取ることもなく走って逃げた。

その日はそれぞれ家に帰って、翌日、普通に登校した。
何か怖くて、親や先生など、誰にも言わなかった。

しかし小学生ながら、どうせいつかバレて、そのうち大人から何か聞かれるだろうと思っていた。

数ヶ月が過ぎても、誰からも、何も聞かれなかった。

お爺さんの葬式には母が参列した。あの公園の近くのお宅で行われた。
また、その翌月にはお婆さん(奥さん)も亡くなった。
家で寝たきりだったようで、お爺さんの後を追うように。

お婆さんの葬式にも母が参列した。やはり、お宅で行われた。その葬式から帰ってきた母が不思議そうに言った。

「お婆さんの祭壇に、あんたのボールが置いてあったよ」

ボールには私の字で私の名字が書かれており、その横には

「はんにんの」

と書かれていたとのこと。

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