どうしても見ることができない雛人形

家族旅行でとあるおもちゃや玩具がたくさんある博物館に行ったときのことです。

最初のうちはみんなでわいわいと言いながら、昔懐かしいおもちゃなどを見て回っていました。

しかし、ある部屋に入ろうとしたとき、なんだか背筋が続々してきたのです。その部屋は段飾りのお雛様がおいてあるという部屋でした。その部屋を通らなければ先に進むことができないので、どうしてもその部屋に入る必要があります。

しかし、どうしても足が前に出ないのです。とにかく身体全身がその部屋に入ることを全力で拒否しています。足を踏み出そうとすると、身体の中の何かが足を押さえつけて動かないようにしている感じです。

ちらりと部屋の外から中が見えるのですが、特に何かが“見える”というわけではありません。部屋全体もとても明るく、不気味な感じはしないのに、とにかく理由もわからない恐怖感が私をとらえて離しません。

仕方がないのでお雛様に背を向けて目をつむり、家族に手をひいてもらいながらその部屋を通り過ぎることにしました。家族は私の突然の様子にとても驚いていました。部屋を無事に抜けた後、家族が「別になんてことのない古いお雛様があるだけだよ」と言うのですが、やっぱり振り返る気になれませんでした。

もしも、勇気を出してお雛様を見ていたら、いったい何が見えたんでしょうか。