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キミ・ナンヤネンさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

僕がテレビを持っていない理由
短編 2022/02/28 01:43 3,114view
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僕は、いわゆる「テレビ」を持ってないし見ない。

ただパソコンと液晶モニターは持っているが、使わない時には布を被せて画面が見えないようにしている。

僕がいわゆる「テレビ」を持ってない、そして見ないのには理由がある。

中学生の頃の話だ。

ある土曜日の事だったが、見たいホラー映画が深夜にあるという事で、一人っ子の僕は一人だけで遅くまで起きる事にした。

当時はまだVHSの時代でビデオテープくらい買えば良かったが、小遣いが残ってなかったのだ。

両親は早々に寝室に戻って、自分だけが見れるようにしてくれた。

ちなみに、テレビは32型のブラウン管式で、ハイビジョン対応というちょっとした高級品だった。

部屋の電気を消してソファで映画を見ていたが、慣れない徹夜と意外に退屈な展開で途中でウトウトしていた。

目を覚ました時にはすでに放送が終わり、テレビ画面はいわゆる砂嵐になっていた。

テレビを消し、廊下の薄明りだけを頼りに部屋に帰ろうとして、ソファから立ち上がった時だった。

ふとテレビの画面を見ると、画面に反射して僕の後ろに誰かが立っている。

「え?」

と一瞬誰だろう?と思ったが、両親は寝室にいるし、もちろんリビングには僕以外に誰もいない。

これは何かの見間違いか光の反射でそう見えるのか、考えれば考えるほど、体は立ったまま動かなくなっていた。

その人は白っぽいワンピースを着ていて、長髪でその顔は見えない。

確かにソファの後ろは人が通れるほどの間隔があるが、そこには誰もいないはずなのだ。

僕は画面を見つめたまま動けないでいたが、部屋に行くためには、家具などの位置の関係で横を向かないといけない。

しかし横を向くという事は、角度的にその女が視界に入る事になる。

その時間が数秒なのか数分なのか、しばらく考えた末、視界に入るかもしれないが、わずかに横を向くことにした。

そして意を決して横を向いたとき、何かが視界に入った。

そこまでは覚えているのだが、残念と言うべきか、ラッキーと言うべきか、それ以降の記憶が全くないのだ。

気が付いたのは翌朝だった。ソファで母に起こされるまで目覚めなかった。

それ以来、テレビを見るのが苦手になった。

その後、地上波デジタル放送が始まったタイミングで、父はそのテレビを処分した。

なんでも「ハイビジョン対応ブラウン管テレビ」という物がマニアの間では珍重されていたらしく、それなりの値段で売れたらしい。

それから数年後、当時大学生の僕はリサイクルショップでアルバイトをしていた。

ある日の事、店長とスタッフが出張買取からハイエースで帰ってきた。

荷物の搬入を手伝っていると、その中に32型のブラウン管テレビがあった。

「それ重いぞ。あっちに運んで映るかどうかちょっと確認してくれ。」

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