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不思議体験

凍さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

納棺師の独白
短編 2022/02/12 00:15 3,758view
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俺の職業は納棺師です。
ある時俺は90代で孤独死された老婆の納棺業務を請け負いました。喪主は離れて住んでいた姪御さんで、殆ど参列者がいない寂しいお葬式でした。

納棺の儀を終えて蓋を閉ざす瞬間、胸元で組ませた故人の手がぴくりと動きました。
見間違いかと思って顔を寄せれば左手薬指がピクピクと震え、瞼がうっすらと持ち上がり始めました。

「うわっ!」

仰天してとびのいた時には既に目は閉ざされ、故人は安らかな表情を浮かべていました。

葬式の終了間際、火葬場に移動する段になって喪主の姪御さんが駆けてきました。

「伯母の遺品を整理していたら出てきたんですが、今からでもお棺に入れるの間に合いますでしょうか」

そういって彼女がさしだしたのは古ぼけた結婚指輪でした。故人は何十年も前に離婚していたのです。

ああ、どうりで……お棺に寝かされた老婆は、思い出の指輪を左手薬指に嵌めてほしいと訴えていたのです。

俺が快諾してお棺の蓋を開けると、姪御さんは喪服のまま静かに跪き、痩せ細った薬指に指輪を通しました。その後故人は火葬に処され、指輪は灰になりました。

生前は色々あったのでしょうが……天国で旦那さんと会えているように願ってやみません。

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