奇々怪々 お知らせ

呪い・祟り

Cさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

養蚕家の運命
短編 2022/01/27 10:42 1,593view
1

私の家は先祖代々養蚕を営んできました。
多くの蚕を煮殺してきた業の深さが関係しているのでしょうか、一族の男は総じて短命です。父も例外ではありません。

まだ幼い私や母の嘆きをよそに、病床に伏せた父は何故か恍惚とし、最期の瞬間を待ち侘びているようにさえ思えました。

「お父さんは死ぬのが怖くないの?」
「怖くないよ。迎えにきてくれるからな」

力なく微笑んだ父の言葉の意味を知るのは一か月後、彼が亡くなる前夜でした。

その夜妙な胸騒ぎがして布団を抜け出すと、障子に女の影が映っていました。

得体の知れない影を追いかけて辿り着いたのは父の部屋です。好奇心に負けて少しだけ障子を開けるや、衝撃的な光景を目の当たりにしました。

父の枕元に美しい白髪の女が正座し、窄めた口から糸を吐き、父に巻き付けていくのです。
彼女が紡ぐ糸は完全に父の顔面を覆い尽くし、息の音を止めてしまいました。

気も狂いそうな恐怖に駆り立てられて逃げ戻り、半狂乱で母を叩き起こして引き返すと、既に父は事切れていました。窒息の原因となった糸は一本残らず消えており、女の姿も見当たりません。

廊下には真っ白な蚕が一匹這っていました。
私の夫もまた、彼女に連れていかれてしまうのでしょうか。

1/1
関連タグ: #事故物件#髪の毛
コメント(1)
  • 先祖代々養蚕家なのに蚕様の神様を祀っていなかった?

    2022/06/18/12:57

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。