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不思議体験

凪さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

母が消えた話
短編 2022/01/23 23:44 1,003view

私が幼稚園に入園して少し経った頃の不思議な体験です。

当時、社宅に父と母と私の3人で暮らしていました。

社宅は間取りが2K、4階建てのマンションで2階の部屋に住んでいました。

その日は父の帰りが遅く、毎週観ていたテレビ番組をリビング代わりに使っていた部屋のこたつに入り、母と楽しく話しながら観ていました。

私の家族は深夜1時や深夜2時くらいまで夜更かしすることが多く、その日もあまり時間は気にせずにテレビを観ていました。

21時を過ぎた頃、キッチンへ向かう扉がドンッ!と拳で扉を強く叩いたような音が聞こえてきました。

母と私以外は誰もいない状態ですし、社宅の玄関は開け閉めの音が大きく、ドアからの風で扉が揺れるので、父が帰ってきたのなら気づかないはずはないのです。

私はあまりの恐怖でこたつの中に入ろうとしましたが、母に阻止されて『どちらかが確認しに行こう』と言われました。

私も母も怖さと(当時冬だったので)寒さからこたつに出たくなかったのもあり、どちらかと言ったのだと思います。

今思えば、一緒に行けば良かったのだと思います。

どちらが行くか話し合っても決まらず、ジャンケンで負けた方が行こうと母が言い出しました。

ジャンケンで母に勝ったことがほとんどないので私は嫌々でしたが、話し合っても埒が明かないのでジャンケンで決めることにしました。

結果としては言い出しっぺの母が負けて確認しに行くことになりました。

母は何度も『私に何かあったら助けてね、絶対よ!』と言いながら、確認しに行きました。

その直後、扉の方から何かが倒れたような大きな音が聞こえ、母の小さな悲鳴が聞こえて静かになりました。

私は怖くて仕方なかったのですが、意を決して確認しに行くことにし、当時流行っていたセーラームーンのおもちゃの光る杖を握りしめて向かいました。

ですが、そこに母はおらず、何事もなかったように静かでした。

電気をつけて扉も全て開け放っても私以外誰もいませんでした。

私を脅かすために母が外出したのかとも思ったのですが、母の靴は減っておらず、外出もしていませんでした。

怖さに耐えられなくなり、開け放っていた扉を全て閉めて、テレビをつけてこたつの中でしばらく丸くなっていました。

1時間くらい経った頃、もう一度探しに行こうと思いキッチンへ行く扉を開けた時、母が倒れるように部屋に入ってきて『なんで助けてくれなかったの!名前も呼んだのに…!!』と怒られてしまいました。

私は確認しに行って、誰もいなかったことを泣きながら母に伝えましたが、母が言っていたことと内容が違っていたのです。

母いわく、『確認しに行ったら、暗くてよく見えなかったが男性が扉に張り付くようにして立っていた。目が合って口を塞がれ身動きが取れなかった。何とか声を出して私に助けを求めたが私は助けに来なかった。』と言うのです。

私の状況とまったく違い、わけが分からず立ち尽くしていると、母は怒って寝室に行ってしまい、それ以上話すことがありませんでした。

それから十何年経って私が大人になり、もう一度、懐かしさからその話をしましたが、母は『知らない。そんなこと無かったよ?』と言われました。

幽霊なのか、それとも不審者がいたのか、今もよく分からない不思議な話です。

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