河原の石を拾ってはいけない理由

子供の頃、家族で渓流に行きました。
河原でバーベキューをした後は弟と川に入って遊んだのですが、その時川床に奇妙な丸い石を見付けました。

当時小学生だった私には旅先の石を持ち帰る変な癖があり、偶然手に入れたこの石もコレクションに加える事にしました。

川遊びの記念として石を持ち帰った夜、自室で寝ていると不思議な夢を見ました。
それはすぐ近くにせせらぎが流れる森の光景で、古い地蔵が建っています。
得体の知れない気味悪さを感じながら歩み寄り、地蔵の首がないのにぎょっとしました。
一体どこに？反射的に視線を巡らした矢先、急にズボンのポケットが重くなって跪きます。

「うわっ！」

底が抜けたポケットから転がり出たのは例の石で、それが首なし地蔵の方に転がっていきました。

「帰エリタイ……帰リタイ……」
「うわあああ！」

全身汗びっしょりで跳ね起き、机の引きだしを開け放てば、記念品の石がゴトゴトひとりでに動いていました。

翌日家族に事情を話した所、半信半疑の両親をよそに怖い顔をした祖母に窘められました。

「河原の石をやたらと持ち帰っちゃいかん。墓石やお地蔵様の一部かもしれん」

両親に車を出してもらい元の場所に石を返すと同時に、霊現象はぴたりとおさまりました。