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不思議体験

a.k.aさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

内覧写真撮影中に
短編 2022/01/18 21:49 1,092view
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もう10年ほど前になりますが、私が賃貸不動産営業をしていた時の話です。

業務の一つにサイトに掲載する物件の部屋の写真を撮りに行くというものがありました。

研修中に、いくつかの物件に連れて行かれ、回り終わった後に「全部事故物件だったが気持ち悪くなったりしてないか?」と上司に言われ、ケロッとしていたくらい私は霊感などに疎い人間でした。

しかし、その日の業務中にある体験をしてしまうのです。

その日はファミリー向けマンションの撮影でした。8階建のマンションで空き部屋が3室ほどありました。

いつもなら空いている部屋の中で一番上の階まであがって、そこから順番に見ていくのですが、その日はなぜかエレベーターのボタンを押し間違え、203号室のある2階からスタート。

もちろん退居したあとで誰も住んでいませんが、ハウスクリーニングの入った形跡がありませんでした。

家具や物はないのですが、今日引っ越したという感じ。

不審に思いながらも各部屋の写真を撮り、残るは最後の一部屋。ドアを開けるとその部屋は西日が差す明るい部屋でした。しかし何だか嫌な雰囲気で、さっさと写真を撮って帰ろうと部屋に一歩踏み入れました。

すると、入って右側に大きめのクローゼットがあり、開け放たれた状態だったのですぐ目に止まりました。

そして私は目を疑いました。

クローゼットの中の真っ白な壁に、直径30センチはある赤黒い血のような染みが滴るようにしてべったりとくっついていたのです。西日に照らされたそれはとても異様でした。

心臓がバクバクしてきて、私は逃げるように職場へと帰りました。

職場に戻ると少し落ち着いて、撮影した写真をデータをパソコンに落とす作業に移りました。

しかし不思議なことにデータは空っぽ。1件につき10枚は撮らなくてはならず、その日もその物件の写真を10枚以上撮影していたはずでした。

気持ち悪くなって上司に話すと、大家さんに電話してハウスクリーニングの件など確認しようということになりました。

しかし、大家さんからの返答は思ってもみない言葉だったのです。

「203号室はまだ入居中だから内覧なんてできないけど……」

私は冷や汗が止まらなくなりました。

物件の写真を撮りに行く時はまず、大家さんに確認の電話をします。大抵、空室の部屋の鍵はマンションのどこかに置いてあり、私達のような業者が物件の確認の為に割と自由に出入りできるようになっているんです。

なので私も前日に大家さんに鍵の所在の電話を上司と一緒にしていました。水道メーターに置いてあると言われて、確かに水道メーターに203号室の鍵があったんです。

どこか違う物件と勘違いしているのかと更に確認しましたが、そんなこともなく、これ以上の追求もできないまま電話を切るしかありませんでした。

結局、私が見たあの部屋は一体何だったのか。

解決することもないまま退職してしまいましたが、いまだにあの部屋を忘れることができないままでいます。

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