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不思議体験

肝試しの真髄
長編 2021/01/07 21:47 3,868view
あまり怖くない。
ただ、不思議な話をする。

子供のとき、といっても小学生のころだ。
夏休み、塾の講習の合間に弟をつれて、いとこの家の近所の神社で行われる肝試し大会に参加した。
残念ながら我々の一族に田舎はない。
両親ともに東京生まれ東京育ちばかりで、帰省する先がない。
よって夏休みも普通に旅行にいくくらいで、田舎の祖父母の元で非日常体験なんてものはないのである。
だからこそ、その某有名神社の境内で行われる地元町内会主催の肝試しは、とても興奮する催しだった。
なにせ人生で一度も肝試しなんてしたことがない。
本で読む肝試しとは、いったいどんなものなんだろうかと、やたらに興奮した記憶がある。
ちなみに非常に怖がりなので、お化け屋敷なんていかない。
本当は肝試しというだけで卒倒しそうなくらい怖いのに、夏の風物詩を体験できる嬉しさが勝ってしまっていたのだ。

肝試しのルートは単純で、神社のお社がある小山の上から下まで参道を下りる。
わりと大きな神社で、参道も入り口から社まで直結のものと、たくさんの美しい躑躅の植え込みの間を観賞しながら参る道があった。
この観賞参拝ルートを逆に下るわけだ。

参加は一人でも仲間と一緒でもよく、もちろん私は弟といとこの三人で行くことにした。
怖いからだ。
肝試しの集合は夕方すぎだったのに、説明を聞いたり、参加者の腕に結ぶリボンを結んだり、(これをゴール地点で参加賞のお菓子の袋と交換する。このお菓子も肝試しの魅力のひとつである)古ぼけた懐中電灯をチームに一つ渡されたりしているうちに日がしっかり暮れて、雰囲気はばっちりだ。

もとから街灯の光も届かない隔絶された聖域は、とっぷりと粘度の高い暗闇に沈んでいる。
そもそも、日が暮れてからの神社なんて非日常そのものである。
説明をする大人たちの顔もだんだん不思議と怖く見えてきて、この人は本当に懐中電灯を配ってくれたおじさんなんだろうか?あれはさっきリボンをくれたおばさんなんだろうか?と訝しく思う。
いま思えば雰囲気作りなんだろうけれど、聞こえないくらい小さい低い声でぼそぼそと肝試しをスタートする子供たちを送りだす大人たちにも、なんだか不安がこみあげた。

「はい、次のひと」

坂になっているせいで、入り口から続く道がみえずに、暗くぽっかりと開いたようにみえるスタート地点を示される。
しっかりと三人で身を寄せあって足を踏み出した。

わざと明るい声をあげながら、実際にはびびり散らしながら、真ん中が私、右にいとこ、左に弟のならびで肩をくみ進んでいく。子供三人ならギュッとくっついていれば、なんとか通れる道幅だ。
石畳から土の道にうつり、子供の身長だと肩くらいまである生垣の間を歩く。
膝が震えるのを必死で押さえながら、これが膝が笑うってやつか!と変な感心をした。

ところでこの肝試しはもちろん途中で大人たちがお化けに扮して驚かしてくる。
だから先にいったとおぼしきチームの悲鳴がきこえたりするので、余計怖さがつのる。
曲がった先で化け提灯がらびろーんとでてきたり、急に後ろから白い死に装束の幽霊においかけられたり、足元をぬるりとした何かが掠めていったり、生垣ががさがさゆさぶられたり、とにかく贅沢にお化けが配置されていた。
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